3. ビジネスゲーム
2年生のゼミで取り入れました。
ビジネスゲームとは、
「人が意思決定に加わる形態のシミュレーションのこと.マネジメントゲーム (management game), ゲーミングシミュレーション (gaming simulation)とも呼ばれる. 企業活動全体をモデル化したゲームや生産・財務等対象領域を絞ったゲームなどがある. 教育訓練用が多いが,行動分析や戦略検討のためにも利用される. 複数の意思決定者やチームが競合するゲームの他に, 参加者がコンピュータと競うゲームや相手との競合を考えないゲームもある.」
(日本オペレーションズ・リサーチ学会「OR辞典Wiki」より )
であります。
要するに、企業活動における意思決定のトレーニングとして行うグループワーク、で間違っていないと思います。
私のゼミでやっているのは、横浜市立大学で開発されたBG21というビジネスゲームです。
ビジネスゲーム演習―意思決定能力・データ分析能力・プレゼンテーション能力を育てる
BG21は、商品をいくつ仕入れ、いくらで売り、どのくらい宣伝すると、いくつ売れ、いくら儲かるかを、4つのグループ間で競い合うビジネスゲームです。各社は仕入れ数量・販売価格・宣伝費の3つの意思決定を行い、受注数量を予測します。BG21で提供されているExcelワークシートに意思決定数値を入力して、当期の業績をシミュレーションすることができ、赤字になるから販売価格を上げよう、借入が発生するから仕入れ数量を減らそうなど、財務諸表上の数値結果を見ながら意思決定を修正することができます。全社の意思決定が出揃った段階で、ファシリテータが4社の意思決定値を総合して当期の市場シェアを提示し、各社の業績が確定します(各社に提供するものとは別のExcelファイルが用意されています)。四半期ごとに意思決定を繰り返し、一年間の純利益額を競います。
今年の2年ゼミは他教員のピンチヒッターとしてビジネスマネジメントコースの学生を指導しているので、自分の得意なコンピュータ関係の事柄と、彼らが興味を持っているビジネス関係の事柄の、両者を満足させるアイディアとしてビジネスゲームを導入したというわけです。
ちょうど今週、一年間のゲームが終わりましたが、ビジネスゲームの効果は上々だと感じています。普段はふんぞり返っているような学生がグループの仲間に「そうじゃねぇ、こうだろ!」と意見を言っていたり、別のグループに聞かれないようにひそひそ声でじっくりと話し合っているところがあったり、別の学生に財務諸表上の用語の解説をしていたりと、学生同士の学び合いが見られます。
「こうやって助け合ってやりなさい」とは言っていないわけで、ツールとしてのビジネスゲームの導入はありだと思います。一年間の成績発表をした瞬間に「えー、もう終わりー。もう一回やらせて!」という声が聞こえたときはうれしかった。心配しなくても、もう1クールはやるつもりです。
来週は株主総会という名の、各社によるゲームの振り返りプレゼンテーションです。どんなことに気づいてくれるか、楽しみにしています。
自分自身、初めてやることですので、上記テキストの手順にしたがって一回目は行ないましたが、四半期ごとに財務諸表や意思決定のパターン(薄利多売型とか)などのシートを印刷して配布するのが少し難点です。ファシリテータ用のExcelファイル上のシートを印刷して渡すのですが、別の講義でもほとんど印刷物は配布せず、ファイルを直接配信することが多いので、慣れてないんですよね。かと言って、ファシリテータ用のExcelファイルをそのまま渡すと、別のグループのものまで見えてしまうので・・・(意思決定の判断材料が増えるので、また違ったゲームのスタイルになり、それはそれで面白いのかなとも思いますが、もっとゲームに慣れてからにしましょう)。
そこで思いついたんだけど、印刷するときに紙ではなくてPDFにして、それを渡せばいいんじゃないかと。iPadもあるし、Dropbox経由でPDFを渡して、みんなで見てもらえばいいじゃん!フッフッフ、ビジネスコースの学生がiPadをどのくらい使えるか、楽しみだな。すぐに使いこなせそうだけれども。
そういえば夏にSOARSのセミナーでお世話になった東工大の先生が、ゲーミングとエージェントシミュレーションをミックスした、ハイブリッドシミュレーションの研究も行っているとおっしゃっていたっけ。そちらも面白そう。興味アリです。
(その4につづく)
前のエントリの続きです。
2.大学事務の業務分析
こちらも3年ゼミ。
3年ゼミのテーマはビジネスプロセスのシミュレーション分析です。毎年度前期はシミュレーションソフトを使ったモデリングを身につける演習、後期は実際に何かを調査してシミュレーション分析をするという流れで進めています。
昨年度までの2年間は近くの交差点の交通量調査をしましたが、本年度は大学事務局の協力を得て、事務作業の業務分析を行うことにしました。
本年度に調査対象を変更した理由は、交差点での自動車や歩行者の通行や信号機の切り替えなどのモデリングはあまり工夫の余地がなくて、全員同じようなモデルになってしまうこと。卒論での研究対象として交通状況を選ぶ学生が多く、経営学部の研究としていいのかという疑問(観光まちづくりコースもあるし、他コースの学生・教員にもわかりやすいので卒論の発表会では好評なのですが)。教える方が交通量調査に飽きた、などです。
大学の事務作業を選んだ理由は、一般の民間企業よりも調査の協力を得られやすいこと。調査に行くために他の講義を休まなくてよいこと(私が学生の頃は「調査に行くから他の講義は休め!」で済んでました(もちろん講義を優先する同級生もいました)が、そうはいかない本学の雰囲気ですから)でしょうか。一回で完璧に行える調査はほぼないので、学生が自主的に再調査することを期待してのアクセスのよさも選定理由です。
多くの学生が就職先として選ぶことになる事務職の業務を対象に調査・分析を行うことで、就業先の業務に対する理解を深めたり、就職活動に対する意識を醸成したり、協力していただける部署(学修支援課・キャリア支援課)の方たちと気軽に相談できるようになってもらいたい、などなど。「どうだ!ウチのゼミ生は優秀だろ!」と学内アピールをしてみたりとか、一石で二鳥も三鳥も狙っております。
調査したときは礼儀として成果を報告しなければなりませんので、できるかなという少しの不安と、今年のゼミ生ならきっと私の想像以上の成果を上げてくれるはず、という大きな期待をもってプロジェクト進行中です。
今週水曜日に行った担当者へのインタビュー調査では、みんな真剣な面持ちで臨んでいました。普段はおとなしい学生が積極的に質問していたり、企画してよかったなと思える出来事がいくつもありました。インタビューの記録にはiPadやノートPC、紙のメモを使用しました。どの手段が一番よかったか、グループで話し合ってみるのもよいでしょう。
こういう取り組みは「課題解決型」になるのでしょうか? 私自身は大学・大学院を通して所属していたゼミではこれが日常で、他のゼミでやってた輪読などの普通のゼミに対する憧れはあるんですが。いかんせん、自ら経験したこと以外の教育方法はうまくできない。
他大学に勤めている大学院時代の同級生に今回の調査のことを話したら「事務局がよく調査を嫌がらずに受け入れてくれたねぇ」と感慨深げでした。わかります。一般の企業でも調査に前向きなのは管理部門だけで、実際に調査対象となる現場では風当たりが強い中、素知らぬふりで調査を淡々と行うみたいなことが多いのです。事務局の対応には感謝しきりで、このお礼は仕事でお返しします。今年がうまくいったら、私のゼミの伝統行事として育てていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。
<その3に続く(予定)>
後期が始まって3週間経ちました。毎年、講義にsomething newを取り入れていますが、今年度の後期は特にいろいろなことを始めました。
いつも新しいことを取り入れてすごい!のではなく、まだ自分に合った教授方法が確立していないだけですが。
1.iPadでグループワーク
3年生のゼミに導入しました。学内に高度ネットワーク社会研究所という附属研究所があるのですが、そこからの受託研究として行っているものです。研究費から学生用に6台、教員用に1台のiPadを用意できました。
3年ゼミは総勢18名なので、それぞれ2〜4名の6つのグループに分かれて使っています。
本学では学生は1人1台ノートPCを携帯していますが、ノートPCを軸にしてグループワークをすると画面に相対して並ぶことになって、話し合いをしにくいなぁ、という思いが常々ありました。
iPadは普通机にペタっと置いて使うので、車座の真ん中に置いてのぞき込み易いし、軽くて手渡しも容易なのでグループ内で回して個々人の意見を反映させることもできるという想定で取り入れました。
iPadという世間で話題のデバイスを提供してグループワークを活性化させてやろう、という思いもあります。
あと、他のゼミの学生に自慢できたりするかなぁ。就職活動でネタにできるといいなぁ。ウワサを聞きつけて来年度のゼミにも優秀な学生が集まるといいなぁとか、いろいろな思惑があります。
これまで3回の講義では、いい感じで進んでいるのかなという印象です。
ほとんど操作方法を教えなくても使えているのは、iOSの設計が良いのか、IT経営コースでコンピュータに関心の高い学生が多いからなのかは今のところわかりません。入力は普段のPCのキーボードの方が速く打てるようですが。教える方が慣れたら、別のコースのゼミでも試してみようと思っています。
入れているアプリはEvernote、Dropbox、GoodReader、TeamViewer、OmniGraffleですが、今のところEvernoteをメインに使っています。
Evernoteでは全グループ同じアカウントを使用し、グループ別にタグをつけることで、全グループのノートを共有しています。他のグループの考えも見てみましょうっていうことですね。教員のチェックの手間を減らすという面もありますが。
OmniGraffleは後述の業務分析において、ビジネスプロセスのフローを描くために導入。ちょっと高かったですが、自分の学生時代を思い出すと、高価なソフトを扱わせてもらってモチベーションが上がったので、すこし奮発しました。
Dropbox、GoodReader、TeamViewerは教材の提示やノートPCで作成したファイルの共有のために入れておきましたが、まだ出番が来ません。
何でもかんでもiPadでとは考えてなくて、調査結果をまとめる、なんていうときはノートPCでOffice系のソフトを使った方がいいだろうと思っていますので、そこで作ったファイルを全員で共有するときに使おうかなと。
iPadのようなデバイスの登場で、TPOに合わせたデバイスの選択が今後のキモになると思うので、学生と一緒に考えていきたいと思っています。
(学内でiPadを使っていると「ノートPCの代わりになりますか?」とよく聞かれます。「なりません」と応じるとすごく残念な顔をされるのですが。うまい説明がいつもできませんが、「パターなしでゴルフをやるようなもんです」と言ったら伝わるかなぁ。いまテレビで遼くんがプレイしてるから思いついた喩えですがw。できないことはないけど、相応しい道具が別にあるなら、そっちを使った方がいいのかなという気がします)
<当初は続けていくつかの実践を書こうと思いましたが、長くなってしまったのでエントリを分割します>
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